ごく大雑把にいえば、プロ棋士が強いのは、手を「読める」からではなく「読まない」からだ。長年の鍛錬によって、「読まなくてよい手」を直感的に捨てられるから、「読むべき手」に全力を注ぐことができる。
ところが、いま将棋界を襲っているエイリアンたちは、片っ端から手を読む。それに耐えうる「脳」の馬力がある。そして将棋とは、人間が捨ててしまう手のなかに、例外的に「正解」がまぎれこんでいることもあるゲームなのだ。
さらに、第3局に敗れた船江五段はこう話す。
「正直にいえば、勝ったと思ったときがありました。ところが、コンピュータはそこからの粘りがものすごいんです。
人間ならば気持ちが切れて、自分から負けに行ってしまうかもしれませんが、コンピュータは最後まで、心が折れるということがない。どんなに形勢が悪くても、その局面で最も粘れる手を見つけ出してくる。将棋に勝つというのは、本当に大変なことなんだと学びました」
「心」というものを持たないコンピュータこそは、勝負師の「理想の姿」なのだろう。
将棋は「指す」
囲碁は「打つ」ですが、将棋は「指す」(さす)です。
将棋でも「打つ」という言葉を使いますが、それは持ち駒を盤上に置くことに限定して使われます。
囲碁の場合は盤上の石は移動することがなくて、新しい手は必ず石を新たに盤上に置くことになりますね。つまり、打つという動作の意味としては囲碁も将棋も同じわけです。囲碁の手は「打つ」しかありませんが、将棋の手は「打つ」以外に盤上の駒を移動する手があるので、総称して「指す」と言います。
ちなみに、チェスは持ち駒を使うことはないので、指し手は全て盤上の駒を移動させることになります。将棋の「指し手」に相当する言葉は “move” になります。
じょうせきは「定跡」
これは意味はほぼ同じですが、囲碁の場合だと「定石」と書きます。将棋の場合は「定跡」。
各駒に限定された言い回し
「突く」
歩を突く。盤上の歩をひとつ前に進めることを言います。他の駒では使いません。
「走る」
香車と飛車に限定して使います。香車の場合が多いですね。
ちなみに、棋士の方は香車のことを「槍」とはあまり言わないようです。
「跳ねる」
桂馬に限定した言い方です。
ちなみに、桂馬のことを省略して「馬」と呼んではいけません。「馬」は成り角のことをさします。
「睨む」(にらむ)
角の斜めの利きが間接的に敵の玉や飛車など重要な駒に当たっていることをさします。
また、「覗く」(のぞく)という言い方もしますが、このときは簡単に利きを遮断することができて影響が少ないことが多いです。「睨む」の場合は利きが遮断されていても、それによって相手の指し手に制限が生じて影響力を与えているというニュアンスがあります。
歩を打つときに限定した言い回し
「たたく」
相手の駒の前に歩を打つことを言います。相手が手抜きをすれば、歩でその駒が取れる状態です。大抵の場合は、相手がその歩を取ることを想定していて、野球でいえば犠牲バントのような手です。連続してさらに「たたく」ことを「継ぎ歩(つぎふ)」と呼ぶことがあります。
「垂らす(たらす)」
次の手で成る、つまり「ときん」を作ることができる位置に歩を打つことをさします。
その他の言い回し
「切る」
飛車や角を犠牲にして、勢いのある攻めを行うことを言います。
(例) 角切りの猛襲。
「切れる」
攻めが切れる:攻めが途切れること。
歩切れ:持ち駒に歩が無いこと。
「挨拶する」
端歩を突いたときに、相手も同じ筋の端歩を突くことを言います。相手が挨拶しないときには、さらにもうひとつ端歩を突くことができますが、この状態を「端を突き越した」「端を詰めた」と言います。
「紐をつける」
自分の駒を相手にタダで取られないように他の駒を利かすことを言います。命綱をつけた状態を想像してください。逆に「紐がついていない」状態を「浮いている」と言います。浮き駒が自陣にあると、角を交換したときにそれを狙われたりします。
「頭が丸い」
角と桂馬はひとつ前に進むことができません。そのため相手の歩にいじめられたりします。角と桂馬のこの弱点のことを「頭が丸い」と表現します。
「頓死」(とんし)
防ぐ手段があったのに、それに気がつかずにうっかりと詰まされて負けること。
「さばく」
この言葉を説明するのは(私の棋力では)難しいです。強いて言えば「駒の働きをよくすること。」
将棋の中盤はいかに駒を「さばく」かということが主眼になります。「さばく」の意味がわかって使いこなせる人はもう上級者です。
必修の将棋用語
大盤解説では必ずでてくるのでおさえておきましょう。
「寄せる」
相手の玉を詰ませにかかること。この状態ではもう駒の損得は考えない。
「即詰め」(そくづめ)
詰将棋のように、王手の連続で詰ませることができること。
「詰めろ」
王手はかかっていないが、相手が防ぐ手を指さないと次に即詰めにできる状態。
「必至」(ひっし)
王手はかかっていないが、相手がどんな手を指しても必ず次に即詰めになる状態。